介護技能実習生とその他の制度の違い

介護技能実習生について国会で法案が可決されましたが、外国人介護職の受入れについて、他の方法もあります。
EPA(経済連携協定)による受入れ、および在留資格「介護」です。各制度と検討されている技能実習生制度との違いを説明いたします。
また、外国人介護職受け入れについての日本政府の検討状況をご紹介いたします。

外国人介護職受け入れ方法別比較

技能実習生

EPA*

在留資格「介護」

就労期間

3年(諸条件をクリアした場合は5年)

4年

最長5年(更新可)

介護福祉士の国家資格に合格した場合は永続的に滞在可能

受入国

討議議事録(R/D)」ならびに「補足討議議事録(補足R/D)」を締結している 送出し国15カ国

インドネシア、フィリピン、ベトナム

制限なし

雇用契約

基本的に日本人と同様

基本的に日本人と同様

基本的に日本人と同様

配置基準

最初から含めることができる

最初の6ヶ月は配置基準に含めることができない

日本語能力

入国時N4所持、1年後N3の取得義務がある

おおよそN2以上

おおよそN2以上

人財紹介団体

各監理団体

JICWELSのみ

配属までに必要な時間

面接後4~5ヶ月(ベトナム)

マッチングの約1年

留学ビザとして入国→介護福祉士養成施設(2年以上)→介護福祉士資格取得→配属

面接後6~7ヶ月(ミャンマー)

メリット

・膨大な介護職ニーズに対応可能

・政府の政策的な側面からのバックアップが強い

・受入可能国の指定がない

R/Dを取り交わしている送り出し国15ヶ国から受入可能

・政府から補助金が受けられる

・何かと制限の多いEPA制度を使わなくても介護士を雇うことができる

・N3相当まで現地で教育し、基礎的介護技能教育全般も現地で行う送出し機関から受け入れられれば、相当有用に活用できる

・4年後国家試験に合格すれば介護士として定員に数えられる

デメリット

・日本語能力がEPA,在留資格介護と較べて低い

・EPAで日本に来ても難しい介護福祉士試験に受かる人が少ない。

・介護士採用まで時間がかかりすぎる

・国家資格を所持していない

国家資格取得後、帰国者が多い

・本人に留学費用がかかりすぎ、かつ介護福祉士に受からなければ結局日本で働けない

・N4レベルで入国させると、労働しながらN3合格はほぼ無理で1年で帰国することになる

・結果的に帰国してしまう人が大半である

国家資格取得後、帰国者が多い

・基礎的な介護技能教育全般を行うことなしに受入れると、日本での介護教育に多額の費用と時間がかかってしまう


外国人介護職受け入れについての日本政府の検討状況の推移

2006年 フィリピンよりEPA*による外国人介護士受け入れ開始

2007年 インドネシアとベトナムよりEPA*による外国人介護士受け入れ開始

2014年2月 自民党外国人労働者等特別委員会で、介護での外国人労働者受け入れ拡大の方向を確認

2014年6月 「技能実習生見直しの方向性に関する結果(報告)」

2014年6月 「日本再興戦略改定2014」が閣議決定。2015年度中に新制度移行、外国人技能実習制度の対象職種に

      介護分野を追加することが決定

2014年11月 「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」発足

2015年1月 「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」報告書

2015年2月 「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ」報告書

2015年3月 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」国会提出

2015年6月  厚生労働省「2015年に向けた介護人材にかかる受給推計」発表

2016年3月 自民党が「労働力確保に関する特命委員会」を設置

2016年5月  自民党 労働力確保に関する特命委員会が「「共生の時代」に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」を提言

2016年10月 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」衆院法務委員会で可決

2017年7月 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」施行予定

2017年7月 政府が技能実習の職種に「介護」を追加する予定

(解説)

*EPAとは「経済連携協定」の略称です。自由貿易協定(FTA)を基本として、協定を結んだ国同士の経済取引を円滑化すること、経済活動における連携を強化することを目的とした条約のことです。

日本は様々な国とEPAに合意しています。介護においては2006年にフィリピン、2007年にインドネシア、ベトナムと合意に達し、EPAによる外国人介護士の受け入れがスタートしました。

東南アジアの3カ国と介護人材の受け入れに合意した背景には、EPAの交渉を優位に進めるためだったと考えられます。つまり、必ずしも介護業界のニーズに応えることを目的としていたわけではなかったというわけです。

こうしてある意味、見切り発車的に始まった介護人材の受け入れは、しくみとしてあまりにもハードルが高すぎるものでした。

そもそも、EPAによって日本で介護職として働くためには、まず現地で3年または4年制の看護大学または看護学校を卒業している必要があります。その後日本で介護施設での3年の就業経験が必要になり、日本人にも難関である介護福祉士国家試験に合格する必要があります。特に介護福祉士国家試験については、少なくとも日本語能力試験(JLPT)のN2以上の日本語能力がなければほぼ合格はできない、あまりにも高いハードルが設定されています。

EPAによる外国人介護人材受け入れは、ニーズが膨大にあるにもかかわらず、実際に介護福祉士国家試験に合格して就業できる外国人はごくわずか、というあまりに大きなミスマッチが存在しています。

それどころか、介護福祉士国家試験に合格しても日本に残る外国人はさらに減っており、EPAによる介護職を目指して入国した外国人の90%以上は帰国してしまっているのが現状です。

「EPAによる外国人介護従事者の受け入れは失敗だった」と言われていますが、こうした状況では日本政府も失敗を認めるしかないと考えているようです。

そして新たな外国人介護人材の受け入れの方法が検討され始めました。

参考資料
・外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会 中間まとめ – 厚生労働省
・2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について
・労働力確保に関する特命委員会の設置にあたって
・「共生の時代」に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方
・介護人材の不足と外国人労働者受け入れ─EPAによる介護士候補者受け入れの事例から



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